国立館山海上技術学校について

二年前の進路を決める時期、長男と進路をどうするか話していると、「館山海上技術学校に行きたい」と突然言われました。普通に近くの高校に行くものだと思っていたため、あまりにも斜め横からの申し出に戸惑いましたが、本人が行きたいというところへ行かせてあげるのが親の務めだろうと思い承諾しました。

が、息子の中学校から館山海上技術学校に行った生徒は今までになく、そのため先輩からの情報などといったものも皆無なため、学校のパンフレットとネットのみで情報を集めるしかありませんでした。

そのネット情報すらも少なかったため、これから進学の選択として迷っている方たちに館山海上技術学校について少しでもお役にたてられるよう情報をお届けしたいと思います。

海上技術学校とは

独立行政法人海技教育機構が運営をする船員を育てる学校です。

中学校卒業生を対象として、3年間の商船に関する専門教育及び高等普通教育を行い、わが国の海事産業発展のために、優秀な船舶技術者を育成することを目的としています。

高等学校は文部科学省が所管しますが、海上技術学校は国土交通省下の独立行政法人が所管するので、「高等学校」という言い方はしません。なので、厳密にいうと「高校生」という言い方も当てはまらないのかもしれません。

しかし、ここを卒業すると高等学校卒業と同等の資格が与えられるので、大学受験ももちろん可能ですし、就職・進学に関して一般の高卒と変わりはありません。ただし、大学受験は可能とはいえ、受験対策の授業などをしてくれるわけではないので、己の努力がそうとう必要となります。

余談ですが、映画を見るときに高校生料金で入ろうと学生証を提示すると、大概フリーズされます。

また、「先生」ではなく「教官」と呼び方をしますので、保護者もその呼び方に慣れないといけません。

教育内容

四級海技士(航海・機関の両方)の取得のための専門科目と、高等学校卒業同等資格取得のための普通科目(国語・数学・理科・社会・英語)を履修します。

特に専門科目の授業は、教室での座学の他に練習船や実験装置を使った実習科目が多くあります。

また、3年生の3学期からは大型練習船による3ヶ月の航海実習があり、卒業後も多くの生徒は半年間の乗船実習科に進み、それを終了することで、四級海技士(航海・機関)の免許が取得できます。

学校生活

他の学校ではなかなかやることのないバーベキューだとか、アルバイトOKというより将来のためにぜひやってというスタンスだったり、バイクの免許(しかも中免もOK!)が取れたりだとか、生徒達にとって楽しいことが色々あります。

行事

水泳大会

7月には水泳訓練の総仕上げ?として、競泳をしたり水中騎馬戦や宝物探しなど様々な競技を行います(年によって内容はかわるかもしれません)。昼食はなんとバーベキュー!

バス遠足

普通の高校のような修学旅行はありません。その代り毎年日帰りのバス遠足があります。行きたいところは生徒たちで決めることが出来るようですが、何分日帰りですので、行ける範囲が限られています。

海校祭

11月には「海校祭」と呼ばれる学園祭が行われます。生徒や保護者が色々なお店を出し、またバザーや八百屋さんが来てお店を出すので毎年多くの人がやってきます。
練習船である「望洋丸」にも無料で乗ることが出来るので、当日は早目にチケットをもらう必要があります。(注:その年によって乗船体験できたりできなかったりするようなので、毎年行われるわけではないようです。)

マラソン大会

耐寒訓練として1月に校内マラソン大会が行われます。また、強制ではありませんが、1月に行われる若潮マラソンには、フルマラソンの部に多くの生徒が参加します。

徒歩遠足

3月に片道10km以上を歩いて行く遠足があります。

部活

部活はカッター部、野球部、バスケット部、サッカー部、テニス部があります。館山海上技術学校は高等学校ではないため、野球部は高校野球大会には出ることができません。一般の大会に主に出場しているようです。

カッター部は全国水産・海洋高等学校カッターレース大会や横浜港カッターレースで優勝するほどの強豪です。多くの生徒がカッター部に在籍しています。

女子は全員カッター部に入部します。

アルバイト

休日のみになりますが、学校の許可をうければアルバイトをすることは可能です。が、一年生の一学期だけは寮生活に慣れるためバイトをすることはできません。また、部活動によっては忙しいためバイトをする暇が取れないようです(特にカッター部)。

バイクの免許

バイクの免許は、保護者から取得願の提出があれば取ることが可能です。原付だけでなく、中型自動二輪免許を取る生徒もいます。もちろん学校にバイクを持ち込むことはできないので、自宅に帰省した時に乗るようになります。
中免を取った男子生徒たちは、目下CBRにお熱をあげているようです。

寮生活

原則的には全寮制とのことですが、館山市内や近隣の通学可能な地域からは通学することができます。

男子寮と女子寮は分かれていて、行き来することはできません。

1年生と2年生は同室で、1室4名の部屋となっています。部屋に入ると両脇に二段ベッドが置いてあり、その先に机が両脇に2つずつ壁に向かって置いてあります。

1人ずつにカギ付きのロッカーが与えられていて、入学時に3段の引き出しも買うのですが、それだけでは足りないのでホームセンターなどで5段ぐらいのプラスチックケースを買いそこに服やタオル類などをしまいます。

23時になると消灯の為電源が落とされます。なので、23時以降は電化製品は使えなくなります。夏場の寝苦しい夜も普通の扇風機は使えないため、充電式のものを使ったりしています。もちろんスマホも充電できなくなります。

門限が20:00ですが、20:00の帰校点呼に間に合わないといけません。

お風呂・洗濯

お風呂は学年ごとに入る時間が決まっています。各自でシャンプーやボディーソープドライヤーを準備します。

洗濯は各自が洗濯し、部屋の中やベランダに干します。乾燥機が入ったようですが、あまり台数が無いためあまりあてにしない方がいいかもしれません。

干しているものが風で飛ばされることがよくあるので、気をつけないと校舎の敷地やグランドに下着が落ちていたり、プール掃除した時に出てきたりします。恥ずかしい思いをしないよう、しっかり洗濯ばさみで止めておかないといけません。

女子の場合はベランダに干すのではなく、男子生徒のハートを刺激しないよう部屋の中に干すか、乾燥機を使って乾かすようです。外には干してはいけないようです。

病気・怪我の場合

病気や怪我をした際には教官が病院に連れて行ってくれます。保健の先生はいないので、具合の悪い時は療養室で休むことになりますが、インフルエンザや感染症の場合は他の生徒にうつさない様自宅療養になるので迎えに行かないといけません。

そのため、地方から入学している生徒は、親の方も覚悟を必要とされます。まあ健康であれば何も問題はないのですが。

親が参加する行事(授業参観・保護者会、海校際等)

授業参観&保護者会は6月と10月の年2回行われています。船舶に関する専門的な授業だけに、見ててももはやついてはいけません。真剣に学んでいる子供の姿を見て、「頑張ってるな」とひっそり応援するのみです。

この他に「マリンセミナー」と言って、夏休みに入ってすぐに、生徒たちの寮に保護者が寝泊まりして、練習船による海上実習をはじめ、ロープワーク実習や溶接実習といった実技体験、座学などを体験する行事があります。(食事代のみ費用がかかります。)
また卒業生を講師に迎え、保護者たちの知らない内航海運の現状や船員生活・労働環境などをテーマにした講演会やバーベキューなどもあり、非常に有意義な内容となっています。
子供たちが日ごろ学んでいることを親が体験することによって親子関係を深め合い、またあまり接することのない保護者同士の親睦を図り、学校の教育現場を理解するのに一役買っています。
「マリンセミナー」に子供を連れての参加もできますが、寮に泊まれるのは保護者だけとなるので、その場合はどこか宿を取る必要があります。

そして11月には海校祭が行われます。遠いため授業参観には出席できない保護者でも、一年に一度は子供に会いに来るよう、多くの方が海校祭には来ているようです。

生徒たちのお店の他に保護者たちもいくつかお店を出し、その売り上げは生徒たちに寄付します。お店のお手伝いをするとたくさんの方と仲良くなれるのでぜひ参加することをおすすめします!

受験について

推薦と一般試験

推薦入学試験と一般入学試験があります。推薦入学試験には中学校長推薦自己推薦とがあり、合わせて定員の70%の枠となります。

残りの30%が一般入学試験の合格枠となるのですが、可能な限り、校長推薦をもらって受験した方がいいと思います。

あくまでも予想なのですが、合格発表の受験番号を見ると0番台と100番台があり、0番台の方が圧倒的に多いのを見ると校長推薦が0番台であると思われるので、

真剣に目指しているのであれば校長推薦をぜひもらってください。

推薦入学試験だと試験日が1/20前後(合格発表1/25前後)ですが、一般入学試験だと試験日が2/10前後(合格発表2/15前後)になります。推薦入学試験の方が早く決まるので、親としても安心できます。

推薦入学試験で落ちた場合でも、一般入学試験を受験することはできるようです。その場合の入学検定料2,200円は無料になります。

合格の基準は学校のパンフレットにも記載してありますが、一般試験の場合で国・数・英で45%ほどとれていれば良いようです。問題も非常に簡単なようです。
ただ、推薦でも一般試験でも共通して言えることは、
本人の強い希望とやる気が大事のようです。

試験場所

一般入学試験は館山海上技術学校以外の海上技術学校や短期海上技術学校(宮古市、仙台市、東京都、静岡市)、海技大学校(芦屋市)でも受験することができますが、推薦入学試験は館山海上技術学校でしか行っていません。

そのため遠くから受験する子たちは一泊することになります。安くていい宿は早目に予約することをお勧めします。ちなみに私たちは館山駅前にあるホテルマイグラントさんに宿泊しました。

受験生に人気?の宿「ホテルマイグラント」

こちらのホテルは館山駅のすぐ隣にあり、一階がセブンイレブンになっています。駐車場もあるので、車で行っても安心です。

ツインルームで税込11,090円で泊まれます。館山は観光地であるため宿泊施設は沢山あるのですが、ちょっとお高いところが多いので、二人でこの料金で泊まれるならお安いと思います。朝食は一日限定20食でトーストセットが520円で食べられるようです。ちなみに朝食コーナーは非常に狭いです。

食パンは地元で人気の「中村屋」さん!

                  出典:『ホテルマイグラント』HPより

ちなみにこちらのセブンイレブン、電話して300円以上注文すると部屋まで届けてくれるサービスがあるので、出るのが面倒臭いという人は頼んでみるのもいいかもしれません。

館山で安くお腹いっぱいになりたいなら「館山食堂」へ!

夕食はついていないので外に食べに行く事になりますが、ぜひおススメしたいのが、ホテルを出て右に歩いて行くとすぐにある「館山食堂」さん!

「アド街」にも出たココは安くてボリューム満点、人気のお店なんですよ。

天丼はその大きさにびっくりすると思います。

さらには定食なんかもお安く、

このボリュームで980円という驚きの価格!ほとんどのメニューが1,000円以下で食べられるのでお財布にも優し~

おわりに・・・

館山海上技術学校は普通の高校と違いますので、普段ではできない経験をたくさんすることができる学校だと思います。中学を卒業して親元を離れることに、親子とも最初のうちは寂しさを感じます。特に一学期は、入学してから初めての寮生活に戸惑いや不安を抱き、GWに帰省してからまた学校に戻るとその寂しさはいっそう増すことだと思います。

しかし、二学期に入ればいろいろな行事もあるので、段々と学校での生活にも慣れ、ゆとりができてくると思います。親としても毎日お弁当を作らなくてすむことに、深い感謝の気持ちを抱きます。

先輩後輩の諍いも正直あり、いろいろ問題も起きたりもしますが、その中で子供自身がどう受け止めて成長していくか、自分自身で決めて行かなければなりません。良くも悪くも子供自身の自主性にかかっていると思います。

しかし、時間とともに学校での生活に慣れてくると子供たちは見違えるほど逞しく、礼儀正しく成長していきます。離れて暮らしている分、久しぶりに会った時には心身の成長に本当に驚かされます。

子供たちはこの学校を卒業するとそれぞれの道を歩き出し、多くの子たちは実家に帰ることはないと思います。親として中学を卒業して家を出て行くことにまだ早いのではないかと一抹の不安や寂しさを感じるかもしれませんが、子供自身が決めた道、信じて送り出してあげるのも親の務めだと思って子供の背中を押してあげてください。

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